油性ボールペン
私がボールペンを使い始めた頃は、おそらく「油性ボールペン」しかなかったように思う。なぜか分からないけれど、「鉛筆よりボールペンのほうが大人だ」と思っていたので、高校に入るとすぐにボールペンを使い始めた。しかし油性ボールペンというのは、急にむっつりと黙り込んだように書けなくなることがあり困った。「お湯につけるといい」という人がいて、試してみたがダメ。ある人は「先っぽを炙ると出てくる」などと炙り出しみたいなことを教えてくれたが、加減が分からずに焦がしてしまう。勉強机の引出しにはこうしたボールペンの残骸がゴロゴロと転がっていた。たまに、ボールペンのインクの中に空気が入って分離しているのがあったけれど、あれは空気のところまで行くとどうなるんでしょう?試した事はないけれど。そんな中でも、上の写真にある「ビックボールペン」はあまり黙り込む事もなくなめらかに書けたのだが、ペン立てに逆さに入れておくとダラーンとインクが漏れてきて他のペンにまで被害を及ぼした(いまはそんな事もないでしょうが)。
水性ボールペン
その後、水性ボールペンというのが現れた。これは軸の中でサラサラのインクがチャポンチャポンしているのが覗けて、「これなら頑固者のように途中でむっつりする事もなく、最後まで書けるだろう」と期待させてくれた。たしかに油性ボールペンのように途中で書けなくなる事はなかった。また水性というと万年筆のインクのようであるが、どういう仕組みか分からないけれど水で流れる事もない。けれど、その頃はまだ「わら半紙」が普通に使われていたので、このわら半紙に水性ペンで書くと、「ワッ」というかんじでにじむ。おまけに裏に抜けている。また教科書の紙質も悪かったから、これにも使えない。そんなわけで油性ボールペンや鉛筆と併用していた。あと、夏の暑いときに胸ポケットに入れておいてドボドボとインクが噴き出した事があってワイシャツに被害を及ぼした(いまはそんな事もないでしょうが)。
ゲルペン
最後に登場したのが「ゲルボールペン」。インクの発色や書きやすさは水性ペンのようでありながら、わら半紙や教科書に使っても滲まずとても使いやすいペンである。私がよく使うのは「三菱シグノ」。ただ最近このゲルペンにも疑問を持っている。ゲルペンそのものというより新製品の発売に。というのも、どうも極細競争にまい進しているフシがあるのだ。文房具店を覗くと「最新超極細!」と銘打って各メーカーがしのぎどころかペン先まで削っている。0.3なんて当たり前、0.28だ0.25だとユーザーそっちのけで極細の限界に挑戦しているような風情だ。0.18なんてのまで出た・・・おまけに、そうした商品が幅を利かせていて、私の探す0.7なんかは時代遅れだとばかり隅っこのほうに追いやられている。そのむかし、CDの登場でコンパクト化が可能になったオーディオ業界が、果てしない小型化競争に突入して結局はユーザーからそっぽを向かれた事を思い出す。「縮み」志向の日本人はいまでも健在なようだ。