表で音楽を聴くことは余りありませんでしたが、電車通勤するようになって、乗車中の手持ち無沙汰から音楽携帯に入れておいた音楽を聴いていました。
しかしこの音質があまりよろしくない。携帯だから仕方がないのかもしれませんが音に芯がないんですね。特にひどかったのがクリフォード・ブラウンのペット。「牛蒡のような音」という言い回しがあります。牛蒡は周りに味や香りや硬さがあって、芯に行くほど色も薄く柔らかくて味や香りも薄くなるので、芯のない音を「牛蒡のような音」といいますが、このクリフォードは牛蒡どころじゃない、もうストローのような音なんです。芯どころか中身のない音。
これはもちろんクリフォードの責任ではなくて機械のせいです。そこで、別のポータブル機械と考えたのですが、持っているMDはサックスの練習に際して酷使したためねじが飛んで壊れているし、そもそも音はあまりよくない。押入れの奥を漁っていたら古いカセットウォークマンが出てきたのですが、電池を入れっぱなしにしていたため液漏れして、電池ケースの部分に緑の錆が浮いている。迷った挙句、ここは一発、オーディオ用の接点クリーナーで緑の錆を拭いて、もし上手く動くようだったらこちらを使おう(まだゴムが動くかわかりませんが)、だめだったら大人しく音楽携帯で芯のない音を聴かぬでもなく聴いていようと決意して掃除に取り掛かりました。
結局掃除は上手くいって、MD用のきちんと保管されていた唯一のガム型電池を入れてテープをセットして回してみると、これが上手く回る。若干ワウフラッターが感じられますが、これは長年寝かしておいたことによるゴムの硬化で、使っていけば直るだろうと自らに信じ込ませました。
さて、録音です。持っていたラジカセがまだ使えるのでそれで録音しようと、ヨドバシにテープを買いにいって驚きました。ほとんど種類がないんですね。語学用のパック売りは大量にありましたが、音楽用というとTDKの"CDing"、ソニーの"CDx"、それにマクセルの"MY"ぐらいでポジションもノーマルとハイポジそれぞれ一種類という感じ。むかしのようにノーマルでもグレードがあって、ここ一番というときには高いテープを使うといった騒ぎはもはや過去のものみたいですね。
仕方がないのでその中でも一番安くて、ヨドバシなのにダイソー状態になっている100円のCDingII(ハイポジ)を何本か買ってきてラジカセで録音しようと思って、さあ大変!再生はできていたのですが、録音ができなくなっていました。しかし、乗りかかった船だから仕方ないのです。早速、簡単なラジカセやあわよくばカセットデッキを1万円前後でと思ったんですが、そうは上手くいかない。まずCDラジカセにはほとんどドルビーが乗っていない。テープセレクタもあるんだかないんだか怪しい。そこでデッキということになるんですが、これまた選択肢がほとんどない。音質的にもよいものが望めそうなものは非常に高価。ユニオンなどで中古も見てみたけれど、やはりどれも高い。
ということで最後の手段、ヤフーオークションで探すことにしました。この時点でカセットテープから撤退して、iPodのような道へ進むという考えは完全にありませんでした。どうせなら、ナカミチのドラゴンやアイワの9000、だめでもティアックのV6030かソニーのKA3ESを安く手に入れようと意気込んで乗り込んだのですが、どれも高くてだめ。そんな中、古くてあまり名前が知られていないのかティアックのV9000が誰も入札せずに落札時間を迎えようとしていたので入札して待っていたところ、最後まで誰も入札せずに落札。値段は恥ずかしいので書きませんが、当時の1/8ほどで買えました。「こういうオークションは玄人衆が多くて、入札がないなんていうのは何か裏にあるんじゃないか、古い機械だし」と不安も若干ありましたが、きれいに梱包された商品が無事到着。よい出品者だったようです。それがこれ。
バブル時代の名機といわれているだけあって、あれこれ録音してみると驚くほどの音質でした。ダウンロード音楽で、直接音楽携帯に入れていた曲も、CDに焼いてダビングしてみると、それまで聞こえていなかったような音まで聞こえるようになり、音に艶がでます。その後、やはりオークションを使ってメタルテープなど昔の高音質テープを手に入れては録音し、ウォークマンで聴き歩いています。
古くてもいいものはやはりいいんですね。いえ、清盛の尿瓶なんて目じゃないんです(笑)