stationery

ゲルインクボールペン(gel ink pen)

これもまた日本で開発された技術で、1980年代後半にサクラクレパスが「ボールサイン」という商品名で売り出したのが最初だといわれています。これは従来の油性ボールペンと水性ペンそれぞれの欠点を補う形で開発されました。油性ボールペンとは反対に「ボテ(ペン先に付着するインクの固まり)」を出さず書き味も軽く、そして黒がくっきりと黒いボールペン、また水性ペンとは反対ににじまず液漏れをしないボールペンという命題をクリアーしたのがこのペンです。欠点といえば「インクの減りの速さ」ということになるのでしょうが、これも「使い切った」という満足感を与えると考えればあながち欠点ともいいきれない特徴です。

このサクラクレパスの技術を取り入れて、現在では文具メーカー各社がこぞってゲルペンを発売しそれぞれ付加価値をつけて市場を争っています。ブログにも以前書いたのですが、その競争が妙な方向に逸れてユーザー無視の極細競争になっているような気もします。ともあれ、使いやすさと発色の良さで「もう、どれがどれやら分からない」ほど多くの種類が発売されていますが少し整理して紹介したいと思います。各社ともそれぞれ代表的ラインをもち、そこに「ノック式」「ラバーグリップ」「独自色」「ラメ入り」「極細」はては「香り付き」という付加価値をつけているので、まずはこの代表的ラインを知っておくとわかりやすいでしょう。各社の代表ラインは次のようになります。

個体差が大きいので試し書きは欠かせませんが、ただやみくもに試し書きをしても意味がありません。ゲルペン最大のポイントは書き出しです。書き出しがかすれるものはゆくゆく使い物にならなくなります。必ず書き出しをチェックしましょう。筆感ですがどうも同じラインでもキャップ式とノック式ではインクの性質が若干違うようで、概してキャップ式の方が書き味がなめらかなものが多いようです。しかし、ノック式の方が機動性に優れているのでここは使い方と相談して決定した方がいいと思います。

極細のペンを使ってノートを書いている人をたまに見かけますが、超極細は書き味もよくないしあまり薦められません。あれは手帳用なんですよね。ノートを買うお金にも困っているなら細かい字でびっしり書くのも理解できますが、ふつうは0.5ぐらいの太さでサラッと書いた方が「書くこと」に気を取られなくていいと思います。

水性ボールペン(rollerball)

いろいろ調べていくと、どうやら水性ボールペンは日本で開発されそれが海外で大ヒットしたそうですが、詳しいことはトンボのサイトを見てもらえれば分かると思います。

水性ボールペンの長所は万年筆ほどではないにせよ筆圧をかけずにさらさらと字が書ける所です。これはそもそもの発想が「万年筆の書き味とボールペンの簡便性」を両立させようというコンセプトであったことからも当然だといえるでしょう。したがって、短所もまたここから導き出されます。それは「にじみやすい」点です。紙質にもよりますが、わら半紙やペーパーバック、あるいは薄紙の教科書などに張り切って書き込むとほぼ100%滲みます。紙質というのは不思議なもので、いわゆる1平方メートルあたりのグラム数(これが多いほど「厚い紙」となります)に比例するわけではなくて、薄手の紙でも滲まないものもあれば、厚紙なのにはげしく裏写りするものもあります。えてして教科書の紙は裏写りしやすいので水性ペンを使うときは気をつけた方がいいでしょう。

水性ボールペンには直液式と中綿式がありますが、文房具マニアがいつも取り上げる直液式水性ペンとしては次の3つが代表的です。

トンボのMonoballはまさに私にとって青春の筆記具でした。学生自治会に属していたので日に何枚もの報告書や書類を書かなければならなかったのですが、そうしたときにこのペンは非常に役立ちました。何というか神話ではないけれど、「報告書を書くならこのペンで」という雰囲気がありました。このペンの欠点は暑い時期になるとインクがドボッと漏れたりするんですよね。おまけに顔料インクということでなかなか落ちないので結構苦労しました。

パイロットのVcornはずっと後になって知ったものです。このペン、実は密かに水性ペンの最高傑作ではないかと思っています。筆圧をかけると楷書体が上手く書けるのは当然で、報告書をMonoballで書くときも、当然のように筆圧をかけていました。しかしこれだと水性ペンのメリットを消してしまうことになるわけです。しかし、筆圧をかけないとボールに引っ張られる感じで線がまっすぐ引けない。ところがこのVcornは低筆圧でも狙った線を書くことができるのです。この辺の事情は相性の問題もあると思いますが、Monoball一本槍の人は一度試してみたらいいと思います。線はMonoballに比べると若干細いですが液漏れの心配もなさそうです。

Ballぺんてるは日本を代表する文房具らしいのですが、どうも楷書体などきちんとした字体を必要とする報告書系には向いていないようです。というのも、線の太さがまちまちになりがちなんです。ある意味では万年筆にもっとも近い書き味で、上のリンク先の人も評していますが、きっちりした文字を書くよりもサラサラっと殴り書きをするときにこのペンは真価を発揮するように思います。もう一つこのペンで特筆すべきは青インクです。上の3つは青インクがどれも特徴的で、MonoballやVcornが鮮やかな青をしているのに対して、Ball ぺんてるの青は万年筆でいうブルーブラックに似てとても落ち着いた渋い青です。この青が好きでいまでもメモを取るときにこのBallぺんてるを使ったりします。

報告書や履歴書を書くとき、授業のノートを「ノート」に書き込んだりメモを取るとき、手書きのレポートを提出するとき、これらの水性ボールペンが役に立つでしょう。

ボールペン(ballpoint pen)

ここでいうボールペンとは油性ボールペンのことです。水性ボールペンとゲルインク・ボールペンについては次回以降書く予定です。

ボールペンの特長は二つあります。一つは「メンテナンスが楽」であること、もう一つは「にじまない」ことです。万年筆がインクを吸入したりカートリッジを入れ替える必要があるのに対して、使い捨てボールペンはともかく入れ替え式のボールペンでも替え芯を取り替えるだけで済むわけです。それにキャップをはずしておいてもインクが流れ出したり、逆に乾燥して使えなくなったりすることはそうそうありません。初期の頃はインクの流出があったといわれていますが、インクの粘度を上げることで解消されています。にじまないというのは質の悪い紙に書かなければならない時にはかなり重要で、この点では万年筆と水性ボールペンは席を譲らなくてはなりません。いまはあまり使われなくなりましたが、昔は藁半紙や更紙と呼ばれる質の悪い紙がよく使われていました。こういうときは鉛筆かボールペンしか対応のしようがなかったものです。

ボールペンの欠点は1つだけあります。インクの粘度が高いことにより流出がなくなった反面ある程度の筆圧をかけなくては書けなくなったことです(しつこいようですが洒落じゃないよ。もっとも、その筆圧のおかげでカーボン紙に書くときにうってつけの筆記具ともなりましたが)。一定の筆圧を必要とすることで長時間筆記には向かないものになりました。がんばって根性発揮して書くことは可能ですがそれで何かが良くなるわけではないですからね。もっとも油性ボールペンでもbicのボールペンやOHTOの「ソフトインク」などはこうした弱点を改良してかなり書きやすいものになっています。そして弱点とはいえないけれど、油性インクのもつ「発色の悪さ」はゲル・ボールペンの登場によって払拭されましたが、このことは後に譲ります。

ボールペンの使い道ですが、私は「書類記入」と割り切っています。これだと筆記時間は短時間で済みますし、さっと書類を渡されてさっと書き込むことができるからです。学生が使用するときにはどんな使い方が考えられるでしょう?あまり浮かびません。学生課や教務課の書類に書き込むときに使えばいいと思います。なおボールペン全般について体験や感想を交えてブログに駄文を書いています。参考にしてください。

万年筆(fountain pen)

万年筆の特色は「万年保つこと」でも「正式っぽいとこ」でもありません。これは「ほとんど筆圧をかけなくても書ける」という点なんです(洒落じゃないよ)。これを無視して筆圧をかけて書くと万年筆は傷んだり、最悪壊れたりします。そうすると万年筆にふさわしい状況というのが見えてきますね。そう「筆圧をかけて書きたくない状況」です。言い換えれば「長時間筆記するような状況」、だから昔の作家さんはみんな万年筆を選んだわけです。しかし、ワープロ・パソコンの普及でこの長時間筆記のメリットをそれらに譲ることになり、反対にメンテナンスの面倒さや正式っぽさだけがクローズアップされ、万年筆は趣味の分野になってしまいました。その結果、異常にゴテゴテと飾り立てた限定万年筆や超高級万年筆が幅を利かせることになってしまったのです。それはちょうど、神社仏閣が「現実と斬り結んだ存在」であるうちは、人々もそれらを無視していられるのに対して、「現実の意味を失ってしまった存在」になるやいなや観光地として人々がその存在を意識し、しばしば出かけたりするようになるのと似ています。ハイデガー風に言えば存在の存在性が感じられるようになったということでしょう。

しかし、ここでは万年筆品評ではなくて、あくまでもツールとしての万年筆を考えていきたいと思います。司法試験の受験生の間では常識になっているのですが、万年筆は「論述型試験」に向いています。長い文を書き続けなければならない試験の時、万年筆はその実力を遺憾なく発揮します。私が院生だった時にある先生の試験の監督を手伝いましたが、その先生もまた「ペンで書くように」と指示されていました(そのメリットを理解できていない学生には不評のようでしたが)。

「ペンは自由に消したり書いたり出来ない」という不安を持っている人も多いと思いますが、これが逆に注意深く書く、まとめてから書くという習慣を促すことにもなります。私に関していえば、授業で取るメモ風のノートは主に鉛筆、それがそのまま見返せるようなノートに仕上がることが見込めるならば水性ペンを使っていました。そして前者のノート、つまり殴り書きでメモった程度のノートをまとめるときに、万年筆を使い糸綴じノートに写したものです。ペン先の太さはいろいろ試してみたけれど、F(細字)がいいようですね。XF(極細)だとカリカリしすぎるし、M(中字)だとノートに書くときにボタっとした感じになります。趣味と実用を両立させて万年筆を使うことの出来る時期は、一部の人を除いて学生時代だけだと思います。学生の人はためしにノートまとめや試験で万年筆を使ってみてはどうですか?

状況文具(situation stationery)

タイトルは冗談ですが、文房具にも、それを用いるのがふさわしい状況とそうでない状況とがありますね。ここではまず筆記具と紙製品を取り上げます。筆記具というとざっと思いつくのは、「万年筆」、「毛筆」、「ボールペン」、「ローラーボール(水性ボールペン)」、「サインペン」、「シャープペン」、「鉛筆」といったところではないでしょうか?一方、紙製品というと「大学ノート」、「ルーズリーフ」、「レポート用紙」、「原稿用紙」、「半紙」などが代表的です。ここでは「毛筆」と「半紙」は除外しておきましょう。これらは残念なことに特殊な状況で用いられるものになってしまってますから。反対に紙製品の中に「教科書」というのを加えておきましょう。授業ベースで考えると、教科書に書き込むことは非常に多いですから。次回からは、各製品の特色とそれらを用いるのにふさわしい状況とについて考えていきたいと思います。

ボールペンの場合

ボールペンの場合、たとえばクロスのタウンゼントやセンチュリーのような高級系よりも、安くて品質のいいものを見つける楽しみがあります。というのも、万年筆がペンごと、そしてペン先ごとの個体差で書き味が変化するのに対して、ボールペンの場合は軸が何であれ書き味を決定付けるのはリフィルであるので、高級軸を奮発しても喜びは薄いわけです。
ここしばらく使っているボールペンは、写真の100円ボールペンです。軸の色はカラフルですがどちらも黒。侮ってはいけないのは、このリフィル(というかボールペンそのもの)はスイスの名門CARAN d'ACHEのもので、非常に書き味がいい。Bicのビックオレンジよりもさらに一段書き味で上回ります。とにかくゲルペンに引けを取らないほどインクが柔らかくそれでいてちょっとした粘りがストロークを安定させ、滑るような書き心地です。八王子のソニプラで購入しましたが、最近覗いたら売っていませんでした。あそこは商品の変遷が激しいので、また覗いてみようと思っています。

carandache

多色ペンでよく使っているのが、Bicの4色ボールペンです。オレンジと水色の軸があり、本来はオレンジが細字、水色が中字なのですが、なんとなくイメージが合わない気がして、オレンジを中字、水色を細字に差し替えて使っています。細字のほうはややカリカリ気味で、醍醐味は中字のほうにあります。Bicらしく滑らかでいながら適度な粘りのあるインクでくっきりとした線がかけます。こちらはほぼ日手帳のペン挿しに挿して携帯しています。

bic4color

町の文具屋ではぜんぜん見つからなかったので通販サイトのLucid Online Shopで買いました。一本400円。
このペンの欠点はなかなか使わない、たとえば緑(というかだいたい緑)のインクが、放っておかれたためかへそを曲げてすぐに出なくなることです。しばらく円を描いていると流れ始めるんですが。

今年の手帳

このサイトの他の記事にも書きましたが、今年は「ほぼ日手帳2006」を使っています。一日1ページという仕様で記入欄が広く取られているので、その日にやっておくべきことだけでなく、人から聞いた指導や話そうと思うことなどもメモっておけるのでとても便利です。
欠点はとにかく厚いこと。また、しおりがあるのでさほどでもないですが、週割のページよりも、目当てのページが見つけづらい点も少し不満です。まあ、仕方ありません。週割で記入スペースを広く取ろうと思えば、今度はクオバディスのエグゼクティブやトリノートのような大判になってしまうのですから。

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左が開いたところ、右が閉じたところ。土居光知先生の『岩波英和辞典』ぐらいの厚さです(笑)。でもこれだけ厚いわりに、綴じ方を工夫してあるようでパタンと見開くことができ、紙が浮いてくることはありません。ペンはシェーファーのノンナンセンスに本体より高いコンバーターを使い、パイロットの青インクを入れています。一般に青は耐水性がなく、ブルーブラックに耐水性があるといわれていますが、パイロットは青のほうがブルーブラックより耐水性があります。

来年度のノート完成

春休みになると先生たちは何をしているのでしょう?
暇に飽かせて旅行を楽しんだりだらだらしたりしている人もいないことはないでしょうが、多くの先生は自分の研究を進めたり、来年度の講義の準備をしているはずです。私もノート作りをしていましたが、やっと完成しました(といっても、配布資料の作成が残っているのですが・・・)。下の写真は来年度用のノートです。ノートブックはMoleskineです。これまでは各講義ごとに別々のノート(それもメーカーまで変えたりして間違いが起きないよう)にしてきたのですが、一冊で全部済んだら楽だと思い、Moleskineを導入しました。これ、リーフの枚数が多いんですよ。付箋かなにかで仕切って全講義を収録することができます。
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使用しているペンはPelikanのいわゆる400茶縞でFineニブ。使っているインクはLamy BB、耐水性のあるパーマネントインクです。授業中手に汗を握って、その手でノートを触った場合、耐水性がないインクだと流れてしまうんですね。また、Moleskineノートに万年筆や水性ペンを使用した場合、多くが滲んだり裏写りしてしまうのですが、Lamy BBに関してはそういう心配がまったくありません。ちなみに写真に写っている赤は、 Private ReserveのFiesta Redです。濃くて暗めの赤が好みで使っていますが、このインクでゆっくり書くと確実に裏抜けします。万年筆と文房具のページで紹介しているツバメやクレールフォンテーヌは紙質がよいのでこんな苦労はないのですが(下の写真はそのクレールフォンテーヌ、昨年度のノート。ホチキス綴じなので、手を離すとこうやって浮いてきてしまう)。
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写真だと分かりづらいですが、Moleskineが生成りの色合いなのに対してクレールフォンテーヌは真っ白です。

ノート一冊だけをもって颯爽と教室に乗り込み、知的刺激と感動に満ちた授業を繰り広げ、ベルが鳴るとまたその一冊をさっと手に教室を後にする、などという様子がいいことを妄想したりしますが、所詮妄想ですね(笑)。

手帳(diary)

年末になるとどこの本屋、文房具屋に行っても手帳が賑々しく店頭を飾っていますね。私はこれまであまり手帳を使うことはありませんでした。たいていのことは記憶できたのと、仕事の関係上イレギュラーな業務がほとんどなく、学生と一緒で机の上に一週間の時間割表を貼っておけば事足りていました。必要なのは飲み会がいつあるのかぐらいで、そういうことだけを裏紙にメモっておけば済んだというわけです(笑)。しかし近年はそうも言っていられなくなったので、手帳を使うことにしました。

そうして調べてみるとあるわあるわ、「こんなに手帳って出ていたんだ!?」と驚くほどの種類や量が売られているのに気づきました(って、遅いですか?)。そしてその氾濫ぶりに一体どれを買えばいいのかしばらく迷いました。そこで片っ端から眺めて見ましたが全然違いが分からない。それもそのはずでこれだけ多種多様な手帳類も、実はいくつかのスタイルに分類でき、メーカーではそれ以外の部分に差異をつけてシェアを争っているんですね。そのことに気づくと案外すっきり手帳を選び出すことが出来ました。手帳は大きく分けると、「マンスリー」「ウィークリー」「デイリー」に分けられます。もちろんこれらを一冊の手帳で組み合わせているのですが、大きくはその3つです。

「マンスリー」すなわち一ヶ月スケジュールの表示方式は代表的なものとして、「リスト型」「カレンダー型」に分けられます。「リスト型」というのは縦書きであれ横書きであれ、一ヶ月が一続きで並んでいるものです。一方「カレンダー型」は文字通りカレンダー状に矩形が並んだ見開きページがあり、ユーザーはその日のコマに予定を記入していくタイプです。私や学生のように週という単位で行動する人は記入や閲覧のし易さからカレンダー型を選ぶ人が多いようです。このマンスリーだけで完成した手帳は、たとえば高橋手帳のリベルシリーズなどが代表的です。これは薄く軽いので携帯性が高く便利なのですが、予定が少し立て込んだだけでギュウギュウな感じになるので、普通はマンスリー部の次にウィークリーが来ます。

ウィークリーこそ、各社がこぞってその妍(けん)を競っている部分だと思います。見落としがあるかも知れませんが、大きく分けて3つ、すなわち「レフト式」「セパレート式」「ヴァーティカル式」です。「レフト式」というのは能率手帳や、高橋の手帳、そして我らが潮出版の文化手帖などが採用している方式で、見開いて左側に一週間の日記欄、右側がメモ欄となっているものです。そして大概日記欄には時間の目盛りが振ってあります。「セパレート式」は見開きでたとえば左側に月?木、右側に金?日というように日記欄が振り分けられていて、ちょっと工夫すればスケジュール帳ではなくて日記帳としても活用できるようなスタイルのものです。能率手帳や高橋手帳、あるいはちくまの文庫手帳などがこうしたスタイルを取っています。最後の「ヴァーティカル式」は、最近でこそ様々なメーカーが取り入れていますが、なんと言ってもフランスのクオバディス(Quo Vadis)で有名な方式です。一週間が細長く横に並び、各曜日の時間軸が垂直(ヴァーティカル)に切ってあるためヴァーティカル式と呼ばれるわけです。これは構造上レフト式よりも時間軸を多く(あるいは長く)とれるので、時間管理が必要な人にはむいているようです。私は今年これを使っていましたが、時間管理の必要があまりないのでそれほどメリットを感じることはありませんでした。むしろ、国産の手帳になら必ずといっていいほどついている「マンスリー」の部分がばっさり削ぎ落とされていたので、手帳の前の部分に別のマンスリーリフィルを貼りつけて使っていました。これ以外にもあると思いますが、まずはスタンダードな「レフト式」、日記帳にもなる「セパレート式」、そして時間管理の「ヴァーティカル式」が代表的なスタイルとなります。

デイリーは一日一ページの手帳を指します。ここまで来ると手帳はかなり限られてきます。というのも一日一ページですから必然的に分厚くなりますよね。ですからそれなりに判型も大きくないとバランスが悪くなる。そんな中でかなり頑張っているのがモールスキンポケットデイリーと、最近評判のほぼ日手帳です。モールスキンは、私も新宿の伊東屋で出して見せてもらいましたが、かなり分厚いものでした。多分あれで殴られたら怪我をするでしょう(笑)。一方のほぼ日手帳ですが、紙を工夫したようでかなり薄く仕上がっています(といってもかなり厚いですが)。この手帳は主婦などが日記をかねて使えるということで人気があるようですが、私も今年はこれを買ってみました。一日一ページなので授業で言おうとする事や、人から聞いた話や指導を書いておくことが出来そうだからです。各ページの下にあるコラム欄も面白い読み物になっています。

最近は手帳ブームであるらしく、手帳関連の書物もまた手帳並みに店頭を賑わしています。私は大した手帳の使い手ではないのでそれらの書籍のように参考にはならないと思いますが、素人が見た最近の手帳事情ということで読んでいただければ幸いです。

成長してくれたペン

サイトの方でも、文具についていろいろ書いているけれども、あちらはどちらかというと総論に近い感じで、なるたけ「持ち物紹介」「持ち物自慢」はしないようにしようと心がけています。一方ブログの方は、授業も終わって定期的な記事もなくなり、メンテの必要性からちょっとした話題についていろいろ書いていこうと思っています。
万年筆は、ある程度使い込むとなじんでくると言うか、最初「?」だった部分が徐々に解消されてあるとき劇的に手になじむようになります。ほんの数日前、それまでペンケースに入れて職場に持ち込んで使っていたペリカン・ニューヨークがインクを使い果たしたので、綺麗に洗浄して代わりのペンを下ろすことにしました。数年前から使っているウォーターマンのリエゾンです。ウォーターマンのペン先が硬いと言われ出したのは近年のことですが、わけてもこのリエゾンは形状がラウンドアップ・ニブでとても硬いペン先です。最初手にしたときは書き味も硬いし、あまり良いペンではないという印象でした。

しかし前回使って休ませた後、今回下ろしてみると書き味が劇的に変化していることに気づきました。どういう理由か分からないけれど、万年筆にはこういうことが起こるようです。書き味の変化というのはとりもなおさず経年変化なわけで、前回しまう頃の書き味がそのままつづいていそうなものなんですが、洗浄して、乾かして保存し、新たにインクを入れ直すと、こういう変化が起きていることもしばしばあります。
道具自体の成長を楽しめるところも万年筆のよさだと思います。