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無根拠なオレンジ

本州太平洋側の人間は鮮やかな緑を好み、さらに九州や沖縄になるとオレンジや赤を好むようになると昔なにかの話に聞いた。太陽光線の強さと、その地域の人々が好む色には相関関係があるという話だ。私は最近とみに「オレンジ色」に惹かれるようになって困っている。オレンジ熱といってもいい。なぜ困っているかというと「いまさらオレンジ色って歳でもあるまい」という色と年齢との間の無根拠な思いこみが原因である。根拠がある思いこみというのは、その根拠を検証し批判すれば思いこみ本体も解消されるから大して困らないのであるが、無根拠の思いこみというのはあらゆるところから根拠を引っ張って来たりしてなかなか無くならない。これは無根拠な差別や偏見は、無根拠であるがゆえに却って強力である事からも分かるが、ここはそういう大切でムズカシイことはちょっとおいといて次に進む。
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数年前に「ロディア」(上の写真)を買ったのがオレンジ熱の始まりであった。当時、「大人といえば黒革でしょう?」と無根拠に思っていたのだが、この黒革製品の間にオレンジのロディアが挟まると鮮烈な存在感を発揮した。これが始まりとなり、電子辞書のケースもオレンジ、ペンも以前紹介した「bicオレンジ」やカラン・ダッシュの100円ボールペン、ついにはクレールフォンテーヌのノート、そしてラミーサファリ限定色(オレンジ)なんていう商品まで買うにいたった。仕事で使うテクストも内容ではなく表紙がオレンジ色であるかで決めた(のは嘘)。しかし、そうしてオレンジで固めてしまうと、結局オレンジの鮮烈さはすっかり失せてしまい、凡庸な色合いに見えてくるのである。この辺に人間の慣れのイヤラシサというか、どうして人は物を買いつづけ(させられ)るのかという問題が垣間見える。
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いまもっとも欲しいと思っているオレンジ色の商品はデルタというペンメーカーの「ドルチェヴィータ」という万年筆である(上の写真)。これ一本さえあればうちの机の上も見違えるほど華やぐのに買えずに困っている。なぜ困っているかというと「お金が無い」という揺るがしがたい根拠があるからである。

ところで、私のオレンジ熱が発症したのはいまから数年前、ちょうど温暖化が騒がれだし、事実東京の夏が非常に暑くなりだした頃である。これはいままで九州沖縄で好まれるとされていた「色の緯度」が上がりだした証拠である、というのが無根拠な思い込みならよいのだけれど。

写譜用のペン

万年筆のペン先に「ミュージック」というのがあります。横に平べったくなっていて、縦に引く線は極太に、横に引く線は細く書ける仕様になっています。
これをそのまま使うのではなく、ペンを真横に持って縦の線を細く、横の線を太くするようにして書くときれいな楽譜が描けるのです。

ところでこの写譜用のペンは実に高い。いや、万年筆としてはそんなに高くないんですが、ロープでもなければ年がら年中写譜しているわけでもない人間にとって、そんなたまにしか使わないものに一万や二万も出すなんてもったいないって気持ちが先立つわけなんですよね。そんな折、たまたま友人からなぜか分からないけれどカリグラフィー用のペンをもらったわけです。シェーファー製。これがまさに縦に太く横に細いミュージックペンと同じペン先である事に気付いたんです。

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上の写真はそのシェーファーカリグラフィーペンです。なんではじめっからそこに気付かなかったのかいま考えると不思議な気もしますが、その頃は「ミュージックペン」という事にこだわっていて、頭の中でカリグラフィーとまったくリンクしていなかったんだと思います。ちなみにこのペンセットにはカリグラフィー教則のリーフレットもついていました。

ノート作りに向いたペン

『成長するティップス先生』を読むと、ノートは毎年更新したほうがいいと書いてありますが、ものぐさな私としてはせめて3年ぐらいはそのまま使わせてくださいと懇願したくなります。

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ノートを作成する(ここでいうノートとは、教員が授業に持ち込むあのノートです。学生が板書などを写すノートについてはまたいずれ書こうと思っています)場合に適した万年筆は、一般的なノートの罫の太さを考えるとやはり細字(fine)であるように思います。また私の場合、意識して治そうとは思っているのですが、小さい字を書きつづけるとどうしてもペンを捏ねてしまう癖があるので小ぶりのものが合っています。使用インクはパーマネント・ブルーブラック。現在売られているものだとモンブラン・ペリカン・ラミーなどがそのグループでしょうか、もちろんボトルインクです。理由は見なおしたり、何度もめくっている時に汗や水がたれると、パーマネントインク以外は滲んでしまうからです。

上の写真は Pelikan M400 。私がノート作りする際に用いるペンです。小ぶりで吸入できるインクの量が少ないのですが、パーマネントインクのように少し扱いが面倒なインクの場合それが利点となって、こまめに洗浄することが出来るわけです。手帳などにもこれを使っています。ペンハウスという筆記具専門のネットショップで購入しました。

万年筆を使おう

パソコンで打ってメールで送信。いまではこれが普通ですよね。
ペンを持つときといえばちょっとした書類にサインするときか、手帳に記入するときぐらいでしょうか?そんなときでも万年筆は仰々しいとボールペンやサインペンで書くことの方が多いですよね。

でも、万年筆もいいもんですよ。保存用のノート作りに使ったり、ブレインストーミングに使ったり、年賀状や手紙、日記を書くのに使ったり。転義的にあまり力を入れて書かなくてもよいものに、字義的に力を入れずに書くためのツールが万年筆です。
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上の写真はMontblanc 146 原稿用紙を書くときに使うペンです。