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『相棒』第8話「ボーダーライン」

昨日の『相棒』はかなりティープな話であった。親しい相棒フリークと話しても「重かった」「身につまされた」という声が多い。

就職氷河期といわれた世代に大学を卒業し、思うに任せぬ日々を歩みつつ、どんどん転落の淵にまで寄ってしまい、ついにボーダーラインを一歩右側に寄ってしまった男の話とも読めるし、押し寄せる幾つもの絶望の波の中、最後の軽いプッシュが彼に命のボーダーラインを踏み越えさせてしまった、とも考えられる多義的なタイトルである。

ゲストの山本浩司(こうじとよむらしい)さんは、それまでも性格俳優としての実績がある人だが、今回の演技でその名声はいやがうえにも高まったと思う。とりわけ、無料でパンが食べられるカフェでパンをほおばる姿は、この国のすがたを象徴的に表していた。小泉内閣の時に、首相以下髪を振り乱して発狂したように「自己責任論」を振り回して以来、この国がもともと持っていたはずのやさしさがどこかへ消し飛んでいるような気がする。そのやさしさとは何か?

最後に右京さんが「彼もまわりの人にも手を差し出す勇気がなかった」と言ったが、この台詞にすべてが集約されている。

「勇気とは慈悲」あるいは「慈悲は勇気という形で現れる」といわれるが、そのやさしさとは慈悲、勇気という形の慈悲なのではないか?それがこの国から、当分消え失せていることが悲しい。そんな問題を突きつけられるようなエピソードであった。

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