今月の紅茶 あるいはダージリン論 あるいは共感覚について

正月に紅茶が空になったので買いに出かけました。目当てはウヴァのクオリティーでしたが、ちょっと遅かったようで売っていない。仕方がないのでアッサムのディクサムを買いました。これは以前にも紹介したことがありますが、アッサムらしいアッサム、濃い水色で味も香りも強く、ミルクティーにすると(というより、ミルクティー以外で飲みようがない)、ミルクキャラメルのような口当たりになります。

正月だったので福袋の景品がついていて、帰って開けてみるとダージリンのオータムナル(秋茶)が普段の半分ぐらいの量(20g)入っていました。ダージリンといえば世界三大銘茶の一つ、セイロン(スリランカ)のウヴァ、中国の祁門(キーマン)と並び称される銘茶ですが、私はあまり飲むことがありません。理由は単純で私は普段ミルクティーを飲むのですが、ダージリンはミルクティーにあわないからです。その原因はずばり「色」にあります。薄いんですね。

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この薄いところに牛乳を入れるとものすごく白けた色合いになり、それに比例して味もシラケた感じになります。今回貰ったオータムナルなどわりと香ばしい香りでミルクと合いそうなのですが、色がヘタルので駄目です。一方、上手くジャンピングさせて濃く出したウヴァや多少下手な淹れかたでもアッサムなどは、そこにミルクを注いでいくとある時点でベスト(つまり美味しそう)な色合いとなり、そのポイントで飲む味は格別です。色を飲んでいるわけではないのですが、不思議なものです。

こういう原理を「共感覚(synaesthesia,シネスシージャ)」と言うそうです。五感が独立してではなく、互いに関連しながら感覚を生み出す仕組みのことだそうです。なるほど、たとえばランボーが「母音」という詩の中で各母音の色合いを定義しているように、ある音がある色を連想させることはあるようです。真っ青に着色されたカレーがいかに食欲を減退させるかを実験しているテレビ番組もありました。また、香道では香りを「聞く(利く)」などと表現します。

ダージリンの場合、この共感覚が邪魔をして、ミルクティーにすると美味しく感じられないのです。

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