保育園の頃から落ち着きなく出歩き、小学校の通知票の「生活態度」欄(こんな内面に踏み込むな、、と子供の頃から思っていました)では6年間「落ち着き」が最低評価。目に付くもの、興味が沸いたものに何でも飛びつき、高校の時に知った "Jack of all trades, and master of none"(訳す気にもなれない)は自分のことだと悟って開き直って生きてきた私が運営するサイトだから仕方がないのかも知れないけれど、まぁショックな出来事がありました(笑)。ある学生さんからの質問:「先生はジャズミュージシャンでアメリカ生活をしていたから、英語を教えているんですか?」
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まぁ、たしかにこのサイトも英語や文学よりも、ジャズの方に力を入れているきらいがあるから仕方ないかも知れないけれど誤解ですね。私は英文学者です。それも18世紀の古典主義詩人の研究。ジャズなんか聴いている暇があったらハンデルやモーツアルトのシンメトリカルな構成でも聴いていればいいのかも知れませんが、とにかく18世紀プロパーです。そんな意味で、今日は英詩のアンソロジーを紹介しておきます(笑)。
英詩のアンソロジーというとパルグレイヴのGolden Treasury が有名ですが、本書もそれに負けないほどすぐれた詩集です。手に取れば分かることですが、ページの左側に原文が、右側に対訳の日本語が載っています。英語が全く分からないなら仕方ありませんが、不得意だという程度の人なら対比して読めるようになっています。また脚注もうるさくない程度に付いているので詩の理解を助けてくれると思います。
詩の構成は、比喩やイメジのような意味的要素と、韻(rhyme)やリズム(rhythm)のような韻律をはじめとして用いられている語音が生み出す楽音的な要素が結合して成立するので、いつまでも訳で詩を読んでいたのでは正しい理解にいたらないと思います。この詩集は19世紀のロマン主義一辺倒ではなく、イギリス・ルネサンスからシェイクスピア、ミルトンを経て、ドライデン、ポウプ、グレイ達も取り上げられ、一方で現代の詩人にもかなりのページを割いているのでバランスがよいと思います。本詩集を読んで気に入った詩人を見つけたら、同じく岩波から「イギリス詩人選シリーズ」という個々の詩人を取り上げたアンソロジーが出ていますからそちらをご覧になるか、私に直接質問して下さい。お答えできる範囲でお答えしたいと思います。