He claps the crag with crooked hands,
Close to the sun in lonely lands,
Ring'd with the azure world, he stands.
The wrinkled sea beneath him crawls,
He watches from his mountain walls,
And like a thunderbolt he falls.
(Tennyson; The Eagle)
(彼は絶壁の岩を、鍵爪のついた手でがっちりと掴んでいる。
孤独な島々において太陽のちかく
蒼穹の世界に取り巻かれながら、彼は佇む。
眼下には皺うつ波が這っている、
彼は崖の頂きからそれを眺め、
雷斧の如き速さで急降下する。)
テニソンの詩「鷲」である。この詩は良い悪い以前に詩の教科書にうってつけの諸要素を備えている。一部で破格するものの全体が「弱強格四音歩(iambic tetrametre)」の三行連(triplet)であること、冒頭の音の様子がごつごつした岩場を表すような音であり、いわゆる音象徴の性質が強いことなど。しかしとりわけ私が注目しているのは「眼下には皺うつ波が這っている」という四行目である。
私の尊敬する桂冠詩人がかつてこう言った:「詩とは分析に対する総合であり、いままで出会いもしなかったような言葉がそこではじめて出会う」と。「皺(wrinkle)」と「海(sea)」、そして「這う(crawl)」という語は一緒に使われる機会の少ない語で、おそらくここで初めて出会ったのであろう。だがどうだろう、鷲の視点から見れば眼下の海は波打つのではなく皺がよって這っているように見えるのではないか。