折れた小指(3)

手術前日
火曜日に仁和会に行くと、紹介状特権というのかさっそく診てもらえることに。

「これは手術した方がいいですね。指というのは変なくっつき方するととてもやっかいなんですよ。」と、断るつもりが顔に出ている患者に向かって名嘉先生が断言する。

むむ、敵はこっちの気持ちを読んでかぶせてきたな。ならば奥の手。

「あのう、宗教上の理由で手術は禁忌(タブー)なんです」
どうだ、宗教上の理由に勝る理由はないだろ(・∀・)きのう大学で考えたんだ。

「輸血もないし、切開もない、ただ上からピンを刺して折れたところを固定するだけですが、そんな手術を禁じる宗教ってどこですか?」

んが、こんな突っ込みあるのかい?そもそも「西洋世界では宗教上の・・・」と考えて気づいた。ここは東洋世界であったのだ。だから靖国とかなし崩しで・・・などと考えているうちにしどろもどろになり、
「えっと、その、まあ、あのそういう手術とは知らなかったもので、わっかりました、受けます」と分かったことをはっきり伝える口調で返事をした。

その後心電図だの肺のレントゲンだのを撮られ、手術は翌日と決まった。翌日は水曜日。朝1限から白山の大学だ。休もうかとも思ったが、それこそ学生や同僚の先生から「勇気をもらう」ために出講し、午後八王子に戻ってから手術を受けられるよう手配した。

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